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COLUMN採用コラム

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RJPとは?ミスマッチを防ぐ採用理論の効果と活用方法

RJPとは?ミスマッチを防ぐ採用理論の効果と活用方法

「良い人材から応募が来ない!」

「そもそも応募件数が少ない!」

「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう・・・。」

このような採用の様々な悩みを解決する糸口として最近注目されているのが、今回のテーマである『RJP理論』です。

RJPと頭文字にされてしまうとピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、内容は至ってシンプルです。この記事ではRJP理論の解説と、良い人材の獲得・継続につながる具体的な活用方法をお伝えしていきます。

多くの情報に触れる現代の求職者には、適切な情報を適切な形で発信することが重要です。RJP理論を採用活動で実践することで、企業と求職者のミスマッチを解消し、素晴らしい人材が長く定着し活躍してくれるようになります。

ぜひ知りたい項目からお読みいただき、実際の採用活動にお役立てください。

 

RJP理論とは?

 

RJP理論とは「Realistic Job Preview(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)」の略。仕事や組織の実態について「良い面だけでなく悪い面も含めて」ありのままの情報を提供することです。

綺麗事ばかり並べるのではなく、企業の課題や解決策(どう乗り越えようとしているのか)などの情報もしっかり伝えることで、企業と求職者とのミスマッチを軽減しようという取り組みです。

RJP理論は、アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウスが提唱した採用理論です。最初に提唱されたのが1975年のことなので、実は理論自体は古くから存在しています。「自己開示」という概念が提唱されたのが1971年であり、個人間におけるコミュニケーションのあり方が採用の場面に応用された形とも解釈できます。

自己開示をすることで自分がどんな人物であるかを相手に理解してもらい、好感や信頼感を得られるように、企業においてもこちらの情報をオープンにすることで、求職者の信頼を得られるようになるはずです。

 

なぜRJP理論が重要視されているのか?

 

近年の日本でピックアップされるようになったのは、労働人口の減少や慢性的な人手不足に伴い、企業間の人材の獲得競争が激化したことが原因と考えられます。優秀な人材を獲得し、長く働いてもらうための解決策として脚光を浴びることになったのがRJPだったのです。

コロナ禍までは売り手市場(求職者よりも採用枠の方が多い状態)の傾向が続いており、求人情報を出しても人が集まりにくい状況でした。人が集まりにくいということは抜けた人材を補うのも難しくなるため、「一度入社してくれた人にはできる限り長く居てもらわないと困る」事態になります。コロナ禍でもこの傾向は大きく変わらず、むしろ例年以上に人が集まりにくい状況が深刻化しています。

また、採用活動には多くのコストがかかっています。広告費や求人情報サービスなどの利用料金、そして迎え入れた後は人件費や教育のための時間や手間などがかかります。せっかく育てた社員がすぐに辞めてしまうようでは、そこまで費やした費用や手間が水の泡と化してしまいます。

こうした「ミスマッチ」の課題を解消し、採用活動に関わるコストを抑え、なおかつ求める人材を得て定着させるために注目されるようになったのが、『RJP理論』なのです。

 

RJP導入で期待できる4つの効果

 

提唱者であるジョン・ワナウスはRJPの効果について次の4つの効果をあげています。

 

1.セルフスクリーニング効果


言い換えると「自己選別効果」。求職者自身が企業や組織に適しているか判断できるようになるということです。かつての採用活動は企業側が選ぶ価値観が定着していましたが、現在では「お互いが選ぶ」価値観が一般的です。

事前にありのままの情報を開示しておくことで、ミスマッチ軽減が期待できます。

 

2.ワクチン効果


ネガティブな情報を事前に知っておけば心の準備ができます。企業に対する「免疫」を作っておくことで、求職者は期待外れや失望感を抱きにくくなります。

たとえば、繁忙期や残業がある場合は伝えておいた方が良いかもしれません。素直に「激務です。」と伝えてしまうと遠のいてしまう恐れがありますが、改善策を実践しているのであれば、それも含めて伝えておくと求職者は安心できるはずです。

 

3.コミットメント効果


コミットメントの直訳は難しいですが、「責任のある約束」というニュアンスで使います。『結果にコミット』というキャッチフレーズのように、単なる約束よりも強い決意を感じさせる言葉です。RJP理論を実践し、ありのままの情報を提供すると求職者にオープンな印象や誠実な印象を与えます。

(誠実に向き合ってくれたからには、こちらも誠実に仕事をしよう。)という強い決意が芽生え、企業への愛着や帰属意識が高まるようになります。

 

4.役割明確化効果


これは新入社員に限りませんが、役割が曖昧では目標を見出しにくくなり、不安が募るケースが多々あります。

(私は何のためにこの仕事をしているんだろう?)
(私がここにいる意味はあるんだろうか?)

このように思い始めると”転職”の言葉が頭をよぎるようになります。

RJP理論の実践によって、どんな役割を担ってほしいか、どのように活躍してほしいかを明確に伝えることで、その企業で働く意義や大義名分が生まれる効果が期待できます。

 

RJP理論の具体的な実践方法


RJP理論の実践にあたり、ジョン・ワナウス氏は5つのガイドラインを設けています。

・RJPの目的を求職者に説明した上で、誠実に情報提供を行い、与えられた情報の十分な検討と自己決定を促すこと
・提供する情報に合ったメディアを用い、信用できる情報を提供すること
・客観的な情報のみならず、現役社員の仕事や組織に対する生の声を含めること
・企業の実態に合わせて、良い情報と悪い情報のバランスを考慮すること
・採用プロセスの早い段階で行うこと

上記の基本的なガイドラインを現代の手法やニーズに合わせて応用し実行していくことが大切です。次の4つのステップを参考に活用してみてください。

 

STEP1:求める人材を明確化する


多くの企業は抽象的で、似たりよったりの表現になっている傾向があります。たとえば「コミュニケーション能力」「相手の立場に立って考え、行動できる人」これだけでは求められるコミュニケーションや、適した考え方・行動の仕方が読み取れません。仮に営業職の募集の場合、toB・toCで話し方が異なる可能性が高いですし、業界や顧客層によっても異なるはずです。

すでに業績を上げている優秀な社員がいれば、その社員の性格や行動特性を分析し、いない場合は理想の社員像をリストアップしましょう。その人に似た求職者が集まるよう、採用コンテンツを練り直していきましょう。

 

STEP2:企業のポジティブ情報・ネガティブ情報を洗い出す


RJP理論を実行するためには、採用コンテンツとして打ち出す情報を整理する必要があります。企業の強みや特徴といったポジティブ情報と、企業の課題などのネガティブをそれぞれ洗い出していきましょう。

特に、数値化するのが難しい事業内容や仕事の様子、社員の雰囲気などはミスマッチを防ぐ上で重要な情報になります。離職の理由として多く挙げられるのは

「労働条件がよくなかった」
「人間関係がよくなかった/合わなかった」
「仕事が自分に合わなかった」

といった理由です。

本来であれば、労働条件や仕事内容についてはエントリー時や選考段階の時点で知っておくべき情報です。「どんな仕事をどのように実行するのか」が曖昧なまま選考が進んでいるとしたら、双方で認識がズレてしまうのは当然と言えます。職場の1日や1週間の様子がしっかりイメージできる程度まで具体化しましょう。

ここで注意すべきはバランスです。ポジティブな情報だけでは過度な期待を与える可能性がありますが、ネガティブな情報が多くても敬遠されてしまう恐れがあります。企業として伸ばしていきたい点と、補っていきたい点を抽出し、言語化していきましょう。

 

STEP3:発信方法を検討する


企業の「ありのまま」を伝えるため、どこで・どの媒体で・どのように発信するかを決めていきます。求人広告や情報サイト、紙面などでは発信できる情報が限られるため、情報を絞り込む必要があります。採用サイトの場合でしたら特に制限はないため企業が出したい情報をそのまま発信できます。

表現方法はテキスト・写真・動画・マンガやイラストなど様々な手段があります。言語化が難しい社内の様子や業務風景は写真や動画を利用すると伝わりやすくなります。男女比や平均年齢、実績に関するデータなどは表やグラフなどで打ち出すと情報を直感的に理解できるようになります。

 

STEP4:発信・検証・改善


発信後は求職者の反応や属性を見て運用方針を決めていきます。RJP理論を実践しても、実際にどのような人が応募するかはやってみなければわかりません。応募が来ない、求める人物像と離れすぎている場合は発信している内容や表現方法を見直す必要があります。

たとえば「和気あいあい」から「切磋琢磨」という表現に変えると、社員同士で求めるコミュニケーションのイメージが変わります。採用コンテンツは単語1つでも反応が変わる可能性がある非常に繊細なものです。求める人物像に近い人と出会えるよう、弛まず改善していきましょう。

また、選考フローやインターンシップなど、採用プロセスの見直しも検討しましょう。インターンシップで就業体験をしてもらうことで認識のズレが解消されミスマッチがなくなります。上司や人事担当者だけではなく、社員との情報交換をする機会などを設けることも有効です。実際の職務環境を案内したり、配属される予定の部署の職務内容を説明するなどして働くイメージが湧くようにしていきましょう。

 

RJP理論を実践し、本当に必要な人材を獲得しましょう


多くの企業がこれまで隠してきたネガティブな情報には、新しく来る社員にも一緒に解決してほしい問題が含まれているはずです。明確な課題があるから人材を求めているのであって、すべての課題を隠してしまうと、解決に導いてくれる即戦力と出会えなくなるかもしれません。

RJP理論の実践は、企業の長所を客観視し、課題と向き合う機会にもなります。ミスマッチは企業にとっても求職者にとっても不幸なことです。企業にとって本当に必要な人材を採用できるよう、企業体質や採用活動全体を見直し、改善していきましょう。